- 悲愁 [DVD]/20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
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BELOVED INFIDEL
1959年アメリカ映画 カラー 20世紀フォックス 135分
監督 ヘンリー・キング
出演 グレゴリー・ペック デボラ・カー エディ・アルバート フィリップ・オバー ハーバート・ラドリー ジョン・サットン
1936年、コラムニストのシーラ・グレアム(デボラ・カー)は、イギリスに婚約者の侯爵を残して、ニューヨークに渡る。シーラは売れっ子となり、ハリウッドでコラムを書くことになる。ハリウッドに渡ったシーラは、友人のパーティで、有名作家のF・スコット・フィッツジェラルド(グレゴリー・ペック)と出会い、恋に落ちる。かつて一斉を風靡した作家であったスコットだが、今はハリウッドで脚本を書いて生活している。妻ゼルダが精神障害で療養所に入り、一人娘のスコティーは寄宿学校にいるため、治療費と学費を稼がなければならないのだ。スコットとシーラは愛し合い、やがて一緒に住むようになる。しかし、スコットには酒が好きという悪い癖があった……。
20年代を代表する作家F・スコット・フィッツジェラルドと、ハリウッドのゴシップコラムニストとして名高かったシーラ・グレアムの愛情を描いた実話です。シーラ・グレアム自身が書いた自伝の映画化なので、かなり事実に沿っていたのではないかと思います。
F・スコット・フィッツジェラルドは、『華麗なるギャッツビー』を書いた人です。他にも『夜はやさし』など、長編の数は多くはありませんが、短編は沢山あります。20年代ジャズ・エイジを代表する作家であり、パリでヘミングウェイなどと交友したロストジェネレーションでもあります。彼の作品では、『バビロン再訪』が一番好きです。これは、『雨の朝巴里に死す』として映画化されました。
一方のシーラ・グレアムは、貧しい環境から這い上がった根性の人。彼女のハリウッドでの姿勢は、過激で攻撃的なもの。彼女のエージェントが「人を攻撃し続けると、誰も会ってくれなくなる」と忠告してくれるほどです。そんな彼女が、スコット・フィッツジェラルドと出会って、恋に落ちます。ふたりは一緒に暮らすようになり、シーラの原稿をスコットが推敲して、高めてくれます。また、読書歴が貧相な彼女のために、スコットが良い本を選びだして一緒に読もうと誘います。シーラに文学の素養を付けるためです。こうして、スコットの教育のお蔭で、彼女は一層の飛躍を遂げます。
ただ、スコットには悪い癖がありました。お酒です。かつての大作家が落ちぶれた扱いを受けるだけでも、そのプライドは酷く傷ついていたでしょう。彼は、それをお酒で紛らわせます。それでは良くないと、お酒を断ち、でも、仕事が上手くいかないと、また……。典型的な転落パターンです。
正直なところ、大好きなグレゴリー・ペックがアル中の役を演じるのにはびっくりしました。アメリカの善意と紳士の象徴のような人ですから。アル中の時は、目が据わって今にも爆発しそうなピリピリ感を感じます。一方のデボラ・カーも、貧しい生まれから成りあがった人には見えませんが、毒舌コラムニストなのに、スコットへの深い愛は本物で、彼女の二面性を感じます。
ふたりの友人役で、エディ・アルバートも出演しています。『ローマの休日』でも、グレゴリー・ペックの友人のカメラマンでした。ここでも、気の良い人です。
ヘンリー・キングは、『慕情』の監督ですが、あの時のように音楽の使い方が素晴らしいです。そして、やはり手堅くまとめているな、と思います。マリブビーチの絶景も夢のような光景です。
アメリカでは大ヒットしたというこの映画。美男美女の共演によるラブストーリーは、やはり見ていて目の保養になるなと感じます。
トレーラーです。