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Channel: 銀幕と緑のピッチとインクの匂い
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『ぼくらの家路』

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ぼくらの家路 [DVD]/アルバトロス

¥4,104
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JACK
2013年ドイツ映画 カラー 103分
監督
出演 イヴォ・ピッツカー ゲオルク・アルムス ルイーゼ・ハイヤー ネレ・ミュラー=シュテーフェン オーディン・ヨーネ



 10歳のジャック(イヴォ・ピッツカー)と6歳のマヌエル(ゲオルク・アルムス)の兄弟は、ベルリンで母親と暮らしていた。若いシングルマザーの母親は、次々と恋人を取り換え、遊び回る始末。ジャックが、家事をして、幼い弟の面倒を見る日々だった。ある日、お風呂でマヌエルが火傷をしてしまう。このことで、ジャックは児童養護施設に行くことになる。そして、待ちわびた夏休み。ジャックは、母の迎えを待っていたが、迎えに行くのが遅くなると電話が……。ジャックは、遂に施設を飛び出して、預けられていた弟を引き取り、母親を探し始めるが……。




 母親は、子供たちを愛し、子供たちは母親を愛している。兄は弟も愛している。愛に満ちた家族の筈なのに、母親は子供たちへの保護者としての務めを果たしません。代わりに、まだ10歳の兄ジャックが、食事を作り、洗濯をし、弟の面倒を見て、大急ぎで学校に行きます。それを、ジャックは、淡々と文句を言わず、こなします。母親やその友達と遊ぶ楽しい時も、時にはあります。母は、いつも兄弟とじゃれ合ってくれる。でも、夜中に知らない男が母親のベッドにいることも珍しくはない。
 

 そんな必死の毎日を送るジャックでしたが、うっかり弟に火傷させたことから、ジャックひとりが引き離されて施設に送られることになってしまいます。施設自体は、申し分のないところ。気をつけて見てくれるスタッフもいます。ただ、上級生に苛められる辛い日々でもあります。


 それでも、夏休みには家に帰れる、ママに会えると、ジャックはひたすら我慢して過ごします。しかし、母親は迎えにやってこない……。遂にジャックは、施設を飛び出し、家に戻るのです。でも、母はいない。鍵もない。アパートには入れません。ジャックは、マヌエルが預けられている家に行き、弟を引き取ります。そして、母の行きそうなところ、友人のところ、職場、元恋人のところなど、様々なところを探し回るのです。


 ジャックを演じるイヴォ・ピッツカーは、オーディションで選ばれた素人だそうです。しかし、原題通り、これは彼の映画です。大げさな演技はありませんが、弟を守り、ベルリンの街を放浪し、ひたすら母を求めて歩き続けます。弟のマヌエルは、可愛い。愛らしい存在です。でも、ジャックは、ただひたすら愛おしい……。


 朝から晩まで、泊まるところもなく、食べるものもなく、服はよれよれになり、トイレで顔を洗い、兄弟は生きていきます。ひたすら母に会うために。


 池で、マヌエルのおもちゃの舟が流れて行った時の、舟の獲り方などを見ても、ジャックは頭が良い少年です。その頭の良さを活かして、何とかサバイバルしていきます。その母親ゆえに、元々10歳には思えなかったジャックが、この放浪を通して、何倍も成長していくのです。



 大きなサスペンスがあるわけではない。小さなことの積み重ねが、淡々と映画の中では描かれていきます。そのひとつひとつが心に残る珠玉の映画です。見れば見るほど、ジャックが愛おしくなります。



トレイラーです。




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