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Channel: 銀幕と緑のピッチとインクの匂い
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『誰が為に鐘は鳴る』

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誰が為に鐘は鳴る ワールドプレミア上映版 [DVD]/ジェネオン・ユニバーサル

¥1,543
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FOR WHOM THE BELL TOLLS
1943年アメリカ映画 パラマウント カラー 130分(通常版)
監督 サム・ウッド
出演 ゲーリー・クーパー イングリッド・バーグマン  エイキム・タミロフ  カティナ・パクシノー アルトゥーロ・デ・コルドヴァ


 今回、ワールドプレミア上映版という通常版より30分長いバージョンで鑑賞しました。
 


 1937年、右翼のフランコ派と、人民戦線が対立するスペイン内乱が起きていた。アメリカ人で、大学でスペイン語を教える講師ロベルト(ロバート)・ジョーダン(ゲーリー・クーパー)は、義勇兵として人民戦線に身を投じていた。彼は、戦略上重要な橋を爆破する役割を担っていた。彼は、山岳部で活動するゲリラ隊に助けを求める。ゲリラ隊の隊長はパブロ(エイキム・タミロフ。その妻ピラー(カティナ・パクシノー)は、パブロより強いと言われていた。そして、そのゲリラ隊には、若く美しい娘マリア(イングリッド・バーグマン)がいた。激しい戦いが続く中、ふたりは惹かれ合っていく……。



 ノーベル賞作家アーネスト・ヘミングウェイの原作を映画化したものです。ヘミングウェイ自身が、スペイン内乱に人民戦線側として参戦しているので、自らの体験をベースにしたものです。


 映画が始まると同時に、鐘が鳴ります。そして、「誰も人の死より逃れられぬ ゆえに問うなかれ 誰がために鐘は鳴ると そは汝がために鳴るなり」という詩が流れます。詩人は、ジョン・ダン。

 そして、戦闘シーンになるのですが、怪我をした仲間を撃ち殺すという衝撃的なシーンから始まるのです。怪我をした本人が、自ら殺してくれ、と願うのです。仲間の足手まといになるから。

 アメリカ人ロベルト・ジョーダンは、橋を爆破するという大きな任務を果たすために、道案内老人アンセルモ(この人が味がある!)と一緒に、山に陣取る人民戦線側一派と合流します。山岳ゲリラのボス、パブロは、粗野な男。ちょっと何を考えているのかわからないところがあります。妻のピラーは、とにかく強い女。「彼女の口はムチだ」と仲間は言います。

 そして、この中にいた若く美しい娘がマリア。ファシストに髪をそられて、列車に乗せられたところを、ゲリラに助けられたのでした。その時は、おぼれた子猫だったみたいだと言われます。若い娘が、どれだけの辛酸を舐めたことか。彼女が、ゲリラたちのところにいる期間は、彼女の短い髪が伸びた年月なのです。マリアは、そんな短い髪を気にして「すぐに伸びるわ」と言います。髪は女の命。痛いほど、マリアの気持ちがわかります。

 
 ゲーリー・クーパーとイングリッド・バーグマン。当時のハリウッドを代表する最高の美男美女コンビと言っても、過言ではないでしょう。そのふたりの共演です。ため息が出るような美しさです。特にバーグマン。ブロンドの短いカールの髪に、初めて恋を知った喜びに身体を震わせて、潤んだような美しい瞳をきらめかせる。ため息が出るような美しさです。そして、例の有名なセリフ「キスはどうやってするの、鼻が邪魔だわ」。鼻が高くないと言えないセリフですよね。


 しかし、ふたりのロマンスは、常に戦闘と共にあります。ロベルトが戦闘に行くのに連れていって貰えず、マリアはひたすら祈るのみ。この時のマリアの心情はいかに。

 そして、ロベルトの使命である橋の爆破の日が近づいてくるのです。

 主役ふたりが素晴らしいのは勿論ですが、ゲリラのわき役たちがまた曲者揃いです。ボスのパブロは、いまひとつ信用できない男です。橋の爆破にも彼だけが反対します。やがて、妻のピラーによって、ボスの座を追われることになります。

 妻のピラーは、女丈夫そのもの。陰のボスであった存在が、遂に頼りない夫を追い出してしまいます。それでいて、マリアの庇護者でもある。カティナ・パクシノーは、この演技で、アカデミー助演女優賞を獲得しました。常に戦っているピラーが、動きやすいズボンではなく、いつもロングスカートをはいているのも、ちょっと不思議でした。

 
 同じ国の人々が、敵と味方に分かれて戦う内戦の虚しさよ。これは、第二次大戦への布石となる戦争だっただけに、義勇軍として他国からも沢山の人々が参加したのでした。

 クーパーとバーグマンの恋に酔いしれ、戦争の残酷さに泣き、さすがヘミングウェイという文学的香りを楽しめる映画です。

 中学生の時に初めてこの映画をテレビで見て、号泣しました。


トレイラーです。





 


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