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Channel: 銀幕と緑のピッチとインクの匂い
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『風と共に散る』~Written on the Wind

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 1956年のアメリカ映画です。監督は、ダグラス・サーク。出演は、ロック・ハドソン、ローレン・バコール、ロバート・スタック、ドロシー・マローンです。ドロシー・マローンがこの年のアカデミー賞最優秀助演女優賞を受賞しています。

 音楽はフランク・スキナーが担当していますが、この甘美なテーマ曲は、作詞サミー・カーン、作曲がビクター・ヤングで、フォーエイセスが歌っています。

 冒頭、動画にある通り、豪邸に車が帰ってきます。車から降りたロバート・スタック。玄関から入ってきた枯葉が、屋敷の床を舞う。そして……。衝撃的な冒頭です。
 
 ロバート・スタック演じるカイルと、ドロシー・マローン演じるマリリーは兄妹で、大金持ちのハドリー家の子供。ロック・ハドソン演じるミッチはカイルの親友ですが、心の底では、カイルの妻ルーシーを愛しています。妻役を、ローレン・バコールが演じています。そして、ドロシー・マローンは、ハドソンを愛していて、猛アタックを繰り広げます。ややこしい四角関係です。

 ロック・ハドソンは友情に厚い男だし、ローレン・バコールは貞淑な妻。二人とも善男善女です。それに比べて、ロバート・スタックとドロシー・マローンの兄妹は、大金持ちのドラ息子とドラ娘で、したい放題。ロック・ハドソンから、ローレン・バコールを横取りしたのも、兄です。そして、今でも親友に迷惑をかけっぱなし。妹の方は、昔から好きだったハドソンを振り向かせるためには手段を選びません。いやはや、かなり強烈な兄妹なのです。

 ところがですねえ、この困ったちゃん兄妹は、完全にロック・ハドソンとローレン・バコールを喰ってしまっているのです。主役はハドソンの筈なのに、主人公ふたりは影が薄く、圧倒的にロバート・スタックとドロシー・マローンが目立っています。そして、恐らくは観客の方も、この兄妹に感情移入してしまうのではないでしょうか。少なくとも、私はそうでした。もう、この映画は、完全にハドリー兄妹のお話になってしまっているのです。それぐらいの強烈な存在感でした。

 ダグラス・サークは大好きな監督さんの一人です。メロドラマの巨匠と言われています。確かにそうした作風の作品が多いですが、必ずしもメロメロのドラマというばかりでもないと思います。特にこの映画などは、この強烈なハドリー兄妹二人の人間性を深く描いています。人間を描けなければメロドラマも作れません。そういう意味では、一応ヒーロー、ヒロインが大スターでありながらも何故か影が薄いという不思議な映画でもあります。特に、女優としてはかなり強烈な魅力を放つバコールが影が薄くなるというのは、珍しいですよね。

 音楽も素敵です。さすがにサミー・カーンとビクター・ヤングのコンビだけあります。複雑な人間のどろどろした心情を描いた映画。なかなかの傑作だと思います。



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