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Channel: 銀幕と緑のピッチとインクの匂い
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『コーラス』~La Nuit

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 2004年の大ヒットしたフランス映画です。製作が、あのジャック・ペラン。監督がクリストフ・バラティエ。音楽をブリュノ・クーレが担当しています。

 もう…この映画はいけません。いや、映画がいけないのではなくて、素晴らしいのです。ただ、もう涙が流れて……。

 1949年、問題児や孤児を集めた寄宿学校「池の底」にひとりの教師が赴任してきます。彼の名はクレマン・マテュー。音楽家を目指して挫折した経験もある彼は、校長の横暴さに反発して、音楽で少年たちの心を掴もうとします。そして、合唱隊を結成。特に問題行動の多かったピエール・モランジュも、彼に心を開いていきます。モランジュには、類まれなる歌声がありました。そして、力には力で対決していた、他の教師たちも段々変わっていきます。

 音楽で問題児たちの心を掴む…ええ、ベタな内容なんです。それはわかっているんです。でも、わかっていても、美しい音楽を聴くと、心が洗われるんです。

 池の底なんて、酷い名前の寄宿舎。そこには、親からそこに放り込まれた問題児や、戦争で親を亡くした孤児たちがいます。時は1949年。まだ、終戦からそんなに経っていないのです。子供たちも身を以て戦争を経験しているのです。それを思った時、彼らの問題行動の根本などについても考えさせられてしまいます。でも、彼らには子供らしい夢もあります。そんな彼らを精一杯わかってやろうとするマテュー先生の温かみが、胸にジーンと響くのです。

 マテュー先生を演じるのは、ジェラール・ジュニョ。中年で、背も小さく、全く風采の上がらない先生です。どこか気弱そうでもあります。この先生が、段々格好良く見えてくるんですよね。

 子供たちも個性があって(ただ、描ききるには時間が少ないけれど)可愛いです。特筆すべきは、やっぱりモランジュを演じたジャン=バティスト・モニエ。「天使の顔をしているけれど、心は悪魔」なんて最初に他の先生に言われたくらいの問題児ですが、それも淋しさから出たこと。音楽に出会って、その才能を開花させて、彼の顔があふれんばかりの喜びに変わった時、見ているこちらも涙を禁じ得ないのです。とにかく、彼の歌声が素晴らしい。ありふれた言い方ではありますが、天使の歌声そのものです。実際、合唱団でソリストを務めている実力の持ち主だとか。

 ラストは、案外あっさりしています。そこがこの映画の良いところだと思います。実にフランス映画らしいですね。涙がどっと溢れるクライマックスを期待していたら、拍子抜けするくらい(先生自身もそう思ってた)あっさりしているのですよね。それでいて、心の琴線に触れまくりです。涙が静かに頬をつたうラストなのです。紙飛行機を見ただけで、パブロフの犬状態でこれからは涙が出るでしょう。

 ご紹介しているのは、少年たちの合唱シーンですが、一人離れたところにいるのがジャン=バティスト・モニエ。この時、彼はお仕置きのようなものを受けていたのですが、歌うことを許され、歌に再び浸れる喜びが、段々表情に出てきます。素晴らしいシーンです。

 土曜日のペピノも可愛かったなあ…。音楽がお好きな方には是非お勧めしたい映画です。


コーラス メモリアル・エディション [DVD]/ジェラール・ジュニョ,フランソワ・ベルレアン,ジャン=バティスト・モニエ

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