たんぽぽ娘 (奇想コレクション)/ロバート・F・ヤング
¥1,995
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ロバート・F・ヤングの有名なファンタジーSFの傑作です。
40代半ばのマークは、毎年妻のアンと山小屋に避暑に来ていましたが、今年はアンが陪審員に選ばれたため、ひとりで2週間ばかりの避暑を過ごすことになりました。
そんなある日、マークは丘の上で、ひとりの若い女性に出会います。白いドレスにたんぽぽ色の髪をたなびかせた彼女はとても美しく、マークは心惹かれます。彼女の名前はジュリー。父の作ったタイムマシンで、未来からやってきたと語ります。そんな彼女に話を合わせるマーク。そして、彼らは毎日会うようになります。ジュリーは青いドレスに、たんぽぽ色の髪に似合った青いリボンで髪を束ねていたり、たんぽぽ色の髪と同じイエローのドレスを着ていたり。その美しい姿に、マークはどんどん惹かれていくのです。しかし、彼女はしばらく姿を見せなかった後に黒いドレスを着て現れます。そして、父が亡くなったと泣くのでした。
ひとり丘の上に佇むジュリーは21歳の美しい盛り。たんぽぽ色の髪が美しく、すらりと伸びた脚も美しく、人目を引かずにはいられない美しい女性です。中年のマークは、一目で彼女に惹かれますが、妻がいる身。それでも、マークは彼女に会うのを楽しみに、毎日丘に登るのです。ただ、会うために。現れるジュリーは、毎日美しい色の服を着ており、彼女のたんぽぽ色の髪、美しい丘の風景ともマッチした色彩的美しさを感じずにはいられません。でも、彼女が黒い服を着て現れた日から、すべて変わってしまうのです。
立派な仕事を持ち、非の打ちどころのない美しい妻アンと一人息子を持つマークの人生は充実しています。しかし、長い結婚生活で初めて、ひとりで籠る山小屋。ひとりの解放感は、あっという間に終わり、小さな孤独を感じるようになった頃、出会った若い美しい娘。マークの心は揺れ動き、また若いジュリーの心も揺れ動きます。
その後の彼らは、いかに…?
愛というものの持つ力の強さをしみじみ感じる小説です。若い時に出会っていたら、また違う感慨を持ったでしょう。でも、ある程度年輪を重ねた方が、さらに深い感慨を持てる作品だと思います。他に収録されている作品はバリバリのSFですが、この作品だけは、SFファンでなくても楽しめるものです。そして、心に響く作品です。
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『たんぽぽ娘』
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