追悼　モーリン・オハラ

　１０月２４日、モーリン・オハラが逝去しました。享年９５。

　ジョン・フォード一家の女性の中心的存在で、ジョン・ウェインとの共演作が多かったです。

　ヒッチコックがハリウッドに渡る前に撮った『巌窟の野獣』のヒロインでもありました。

　ハリウッドに渡ってからは、主にジョン・フォード映画で活躍するようになります。『わが谷は緑なりき』は、炭鉱で働く一家族の物語で、子沢山の家の長女役でした。牧師に密かな愛を抱きながら…。冒頭で、弟役のロディ・マクドウォールと呼びかわす「ヒュー～～」「アンハード～」という声が、ずっと印象に残ります。私にとって、大好きな大好きな、心の映画です。他にも『静かなる男』『リオ・グランデの砦』などで活躍します。

　『三十四丁目の奇蹟』では、ナタリー・ウッドの母親役。今で言うシングルマザーでした。仕事に頑張るあまり、夢を忘れた彼女が変貌していく様が見どころでした。西部劇で見る赤毛の鉄火女優とはまた違った魅力がありました。

　

　『長い灰色の線』も、また好きな映画です。タイロン・パワー扮する陸軍学校の教官の妻。長い時をかけて、共に老いていく夫婦の姿と、生徒たちとの絆を描いた感動作でした。

　６０年代以降も、主に母親役で活躍。『ふたりのロッテ』を映画化した『罠にかかったパパとママ』。ヘンリー・フォンダの妻を演じた『スペンサーの山』『赤い仔馬』、共に大好きな作品です。

　そして、久しぶりのジョン・ウェインとの共演作『１００万ドルの血斗』もありました。

　荒野に生きる芯の強い女性。夫を支える温かき妻。古き佳き時代を象徴した女優さんのひとりでした。好きな女優さんでした。

　今年のアカデミー授賞式で名誉賞を受賞しました。授賞式に来られるぐらいお元気だったのですが。でも、授与に間に合って良かったと思います。

　安らかにお眠りください。