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Channel: 銀幕と緑のピッチとインクの匂い
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『花子とアン』感想文 その1

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 いやあ、『花子とアン』、終わっちゃいましたね。半年なんて、あっという間です。

 村岡花子の半生がドラマ化されると聞いた時は、嬉しかったです。おまけに、タイトルが『花子とアン』ですもの。

 実際は、突っ込みどころ満載のドラマで、別の意味で面白かったです。

 ただ、このドラマ、見てよかったのかどうか、悩むところもあります。

 村岡花子は、少女時代からの私の憧れの人でした。尊敬する人でもありました。以前にも書きましたが、この人が訳したアンをはじめ、オルコットやポーターなど、清く正しい少女小説(家庭小説とも言う)で育ってきた私には、これらの本を訳して紹介してくれた村岡花子が、憧れの対象だったのは致し方ないことでしょう。そして、少なからず彼女の訳した言葉を吸収して育ってきましたので、どことなくアンたちのような話し方が身に着いた……は、ちょっと言いすぎかな。

 でも、このドラマを見て、私が長い間持っていた村岡花子像は崩れました。

 あんなに清く正しい小説を世に紹介してくれた人が、不倫の挙句略奪婚なんて……。おまけに、相手の奥様は、病気療養中。友達が教えてくれたところによると、奥様が病気で実家に帰っている間に、村岡さんと不倫関係に至ったそうで、奥さんの病死後、半年も経たないうちに再婚したとか……。さらには、前妻さんとの間の息子さんは、父親に引き取られることなく、奥さんの親戚の間をたらいまわしされたそうです。その挙句、その息子さんが関東大震災で亡くなってしまったと聞いて、もう絶句です……。

 これじゃあ、イメージ崩れても仕方ないですよね。

 おまけに酒乱と来ては……って、これは、ドラマだけの話ですね。

 実際の村岡花子は、全く清く正しい人なんかじゃなかったわけです。実に人間的な、生身の村岡花子を見せられたわけで、私のような年少時からのファンにしてみれば、そりゃあ複雑な気分になりますよ。

 村岡印刷さんに恋してからのはなには、どうしても違和感ありまくりでした。まして、病床の香澄さんが出てきてからは。ドラマの中では、先に離婚したことになっていて不倫手前ということにして、お茶を濁していたようです。

 蓮子さんの熱烈な恋、駆け落ちと比べることによって、はなの恋をソフトにしたのでしょう。

 そんなはなへの複雑な思いがやっと抜けたのが戦争中でした。空襲の時、命がけでアンの原書を持って逃げたこと。この人が、命がけで原書を守ってくれたことによって、私たちはアンに出会えたのだなと思えたのです。

 このドラマのタイトルは、『花子とアン』なんですよね。『花子と白蓮』ではないわけです。白蓮ファンの方には申し訳ないけれど、蓮様のストーリーが多すぎたと思います。あと、お父(おとう)の愛人騒ぎとか、どうでもいいことも多かったですよね。

 タイトルに「アン」がついている以上は、もっと早くアンと出会わせて、アンを訳す苦労、アンに託した思い、などいっぱい描いて欲しかった、というのが、原作ファンの偽りなき思いです。そのあたりの苦労話は、視聴者に想像の翼を広げて欲しかったのでしょうか。では、想像の翼を広げますから、プリンスエドワード島ロケで、美しい風景ぐらいは見せて欲しかったですね。


                      つづく


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