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Channel: 銀幕と緑のピッチとインクの匂い
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わたしの母さん

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昨日の『大草原の小さな家』は、「わたしの母さん」を見ました。オルソン夫人に張り合って、つい綺麗な服地を買ってしまったキャロラインが、自分のドレスを作らずに、メアリーとローラの服に仕立てるというお話です。

 

うちの母は、プロのテイラーです。お客様からお金を貰って、オーダーメイドの洋服を仕立てていました。勿論、自分の服も作り放題。独身時代は、かなりお洒落していたそうです。

 

それが、私が生まれてからは、私専任のテイラーになってくれました。うちは裕福ではありませんでしたが、私にだけはいつも可愛い格好をさせていた、と母は自負しています。信号待ちのところで、お姉さんふたりが「まあ、可愛い」と私のことを言ってくれたそうです。決して可愛い顔をしている私ではないので、きっと洋服を褒めてくれたのでしょう。

 

小学生の時は、入学式は勿論ですが、始業式のたびに新しい服を作ってくれました。朝起きると、新しい服がハンガーにかかっていて、凄く嬉しかったことを覚えています。まるで、メアリーとローラのように。

 

修学旅行には、パンツスーツを作ってくれたし、レースのワンピースや、ネリーちゃんみたいに後ろで大きなおリボンを結ぶワンピースなど、実に多彩な服を作ってくれました。でも、実を言うと、私、心の中では、他の子たちみたいな、サスペンダー付きのスカートに憧れたことがあるんです。今思えば、なんとも贅沢なことなんですが、なんで自分だけ格好が違うのかな、って、子供だったら、きっと考えるでしょう?自分の格好がお洒落だって、まだ小さい時はわかっていなかったんです。

 

中学の時は、セーラー服を作ってくれました。入学したときのセーラー服は買ったものですが、3年も着ているとボロボロになります。だから、3年の時に、セーラー服の生地を仕入れて、作ってくれました。出来たら、セーラー服を着る高校に行ってね、と言いながら。そして、セーラー服を着る高校に入った私は、またまた2年生の時に、新しいセーラー服を作ってもらったのです。母が作るセーラー服は、市販のものと違って、ぴったりしていて着心地の良いものでした。

 

高校を出てからも、相変わらず母のテーラーは大活躍。社会人になってからも、服はいっぱい作ってもらい、それほど買わずに済みました。そして、結婚式の立食パーティ(教会のホールを借りた地味なものでした)では、母に作ってもらったクリーム色のワンピースで出席しました。実は、これ、結婚式の前の夜までかかって仕上げたもので、私も手伝って、まつり縫いをしたのですが、私が下手なもので、母は、「ああ、私の娘がドレスを変にしてしまう!」と嘆いていました。今思えば、このワンピース、ロングドレスにしてもらえばよかったです。

 

いつからか、針に糸を通すのは私の役目になりました。素敵な布がまだ残っているけれど、母のテーラーはお休みすることが多くなりました。父がお中元やお歳暮で商品券を貰うことが多かったので、ふたりで出かけてはデパートで服を買ってもらうことが多くなりました。

 

今、母が作ってくれた洋服は、東京で捨ててきてしまったものもあるけれど、まだ残っているものもあります。捨てられないんです。でも、場所を取る。母は捨ててね、というけれど、一枚一枚に沢山の思い出が詰まっているんです。これからどうするかはわからないけれど、まだしばらく持っていたいと思っています。

 

お母さん、沢山の服を作ってくれて本当にありがとう。

 

 


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