1957年、ルイ・マル監督のフランス映画です。ヌーベルバーグの代表的作品。
主演は、ジャンヌ・モローとモーリス・ロネ。社長夫人であるフロランスとその会社で働く技師のジュリアンは、不倫関係。邪魔な社長を殺すために、二人は完全犯罪を企みます。ジュリアン自らが社長を手にかけ、会社を出ようとしますが、証拠を残しておいたことに気づき戻ろうとして、週末で電源を落とされた社内のエレベーターに取り残されてしまうのです。
冒頭、電話ボックスの中で、ジャンヌ・モローが囁きます。「ジュテーム」。相手はモーリス・ロネ。社長夫人と、社長の部下の道ならぬ恋。二人は自分たちの幸せのために、一線を越えてしまいます。「ジュテーム」と囁きながら、ジャンヌ・モローの頬を伝った涙の意味するものは何だったのでしょう。
ジャンヌ・モローは好きな女優さんです。知的さとアンニュイさを併せ持つ不思議な魅力があります。フランスから起こったヌーベルバーグの動き。モローこそは、それを一番に体現した人だと思います。そして、美しく年を経て、85歳になりましたが、主演作『クロワッサンで朝食を』が日本公開されたばかり。ハリウッドでは余程のことがなければ、隅に追いやられる高齢の俳優さんが、こうして現役でトップでいられるところが、フランス映画界の素敵なところかな、と思います。
そして、モーリス・ロネ。『太陽がいっぱい』でも格好良かったのですが、役柄のせいと、ドロンのあまりに強烈な魅力に、彼のハンサムさもさすがに及ばなかった(演技面や存在感は別で)感もありますが、この映画を観ると、彼も十分すぎるくらいハンサムだなあ、と感嘆します。ただし、社長を殺すというわけありの役。やっぱり、彼は曲者役者です。素晴らしい役者さんだったのに、83年に55歳の若さで、癌でこの世を去っています……。
お馴染みリノ・バンチュラの刑事役が素晴らしいことは言うに及ばず。この人は出てくるだけで、場をさらっていく人です。ハンサムなわけでもないのに、この存在感はどうでしょう!
そして、この事件に絡む若いカップルの男性の方に、ジョルジュ・プージュリーが出ています。『禁じられた遊び』の、あのミシェル。孤児となったポーレットちゃんのお兄ちゃん的存在になって彼女をかばうあのミシェルです。ミシェ~ルというあのラストシーンを思い出して、書いているだけで、また涙が……。すっかり青年になっての登場には、感無量です。このカップル、とんでもないお騒がせなんですけれど。
マイルス・ディヴィスの音楽はあまりに有名。彼が奏でるトランペットの即興演奏は、この映画の主役のひとりです。ジャズのスタンダードナンバーとしても有名になりました。この曲をバックに、ジャンヌ・モローが一人パリを歩き回るシーンは、名場面のひとつです。
映画館で初めて見た時は、多分まだ10代か、それをちょっと脱したぐらいの時で、主演の二人が奏でる愛についてはあまりピンと来ず、犯罪映画として純粋に楽しみました。多分、今見ると、二人の愛について色々考える部分があると思います。時間さえあったら、見直してみたい映画の一つです。
死刑台のエレベーター【HDニューマスター版】 [DVD]/ジャンヌ・モロー,モーリス・ロネ,ジョルジュ・プージュリ
¥3,990
Amazon.co.jp
↧
『死刑台のエレベーター』~テーマ
↧