The Great Sinner
1949年アメリカ映画 MGM 白黒110分
監督 ロバート・シオドマク
出演 グレゴリー・ペック エヴァ・ガードナー メルヴィン・ダグラス ウォルター・ヒューストン エセル・バリモア アグネス・ムーアヘッド
1860年代、著名な小説家フェージャ(グレゴリー・ペック)は、休暇でモスクワからパリへ向かう時、列車で知り合った美しい女性ポリーナ(エヴァ・ガードナー)に惹かれ、彼女の降りた地で途中下車してしまう。そこは保養地で、全ての道がカジノに通じるようなところだった。ポリーナとはカジノで再会。彼女は、オストロフスキー将軍(ウォルター・ヒューストン)の息女だった。将軍は、カジノで賭けに夢中だった。ポリーナも賭けをするが、フェージャのことを彼がいると、自分に運が回ると言う。ふたりは、どんどん惹かれ合うが、カジノの胴元アルマン・ド・グラス(メルヴィン・ダグラス)が、ポリーナを狙っていた……。
この映画については、ほとんど情報がありません。グレゴリー・ペックやエヴァ・ガードナーの日本での出演作リストにも入っていないところを見ると、日本未公開だったのでしょうか。だとしたら、実に勿体ないです。主役ふたりは、美男美女の大スター。脇役では、特にウォルター・ヒューストンのギャンブル狂なのに飄々とした演技他、その母親役にはエセル・バリモアまで登場するという、超豪華な俳優陣なのです。また、作品の内容もなかなかに素晴らしい。結構、傑作だと思います。
グレゴリー・ペックは、生真面目な作家でしたが、美女エヴァ・ガードナーに会って、衝動的に途中下車してしまいます。降りたところは保養地だったのですが、一にカジノ、二にカジノ、と行った土地。そこが悪かった。集まってくる人は、お金持ちばかりとは限りません。賭けがやめられなくて、最後の最後までお金を使い果たしてしまう人も沢山集まってくる土地なのです。そんな土地で、ペックが好意を持ったエヴァは、どうやら賭け事が大好きな様子。複雑な様子で、ペックは彼女を見守るのです。しかし、エヴァの父親ウォルター・ヒューストンは、もっともっと上手で、完全にギャンブル依存症。娘のお金を貰って、カジノに行くぐらいです。実は、親子には秘密がありました。
グレゴリー・ペックは、人が賭け事をしている場面に何度も立ち合いますが、自分では全く賭け事をしません。それなりに著名な作家なので、お金は持っているはずです。ですが、賭け事にのめりこむエヴァ・ガードナーを否定的な目で見るぐらいです。
ギャンブルが、どれ程人の気を狂わせるか。ギャンブルで底なし沼まで落ちていく過程を、この映画はじっくりと描いていきます。その様子は、下手なホラー映画より、余程恐ろしいです。ツキがある時は、結構続く時があり、増えていくお金を前にして、そのお金をまた全部賭けてしまう。そんなに儲けたんだから、そこが止め時でしょう、と見ている方は、ハラハラしてしまいます。人間の欲は、どこまで果てしないんでしょうか。
これは、ロバート・シオドマクが文豪ドストエフスキーの『賭博者』をヒントに作った映画です。原作は読んだことがありません。ドストエフスキーは、『罪と罰』『カラマーゾフの兄弟』などの傑作で知られるロシアの文豪ですが、自身がギャンブル好きで苦しんだそうです。また、癲癇の発作もあったそうです。どうやら、この映画の主人公には、ドストエフスキーの姿が投影されているようです。
若いグレゴリー・ペックとエヴァ・ガードナーの美しさは、目の保養になります。このふたりは共演作がいくつかありますが、この時代にも共演作があるとは初めて知りました。
本当にどうして、日本ではこの映画が正当に評価されなかったのでしょうか。絶対見るべき映画だと思います。レンタルで出ています。
昨日は、ドストエフスキーの生誕200年だったこともあり、この映画を選びました。
トレーラーです。