バルセロナ五輪柔道の金メダリスト、古賀稔彦さんが癌闘病の末に天に召されました。享年53。まだ、たった53。言葉もありません。闘病のことは、お母様にも告げていなかったそうです。親を心配させたくないという気持ちからだったのでしょう。
バルセロナ五輪の時のことはよく覚えています。同門で、兄弟のように仲が良かった2歳年下の吉田選手と練習中に、古賀さんが酷い怪我をしてしまったのですよね。古賀さんのことも心配でしたが、文字通り顔面蒼白だった吉田選手のことも忘れられません。金メダルを期待されていた先輩を怪我させたことは、吉田選手にとっては許されないことだったでしょう。代われるものなら、代わりたかったものと思います。
でも、恐らくは古賀選手から気丈なひと言があったのでしょう。先に試合を迎えた吉田選手は見事金メダルを取りました。そして、翌日、痛み止めを打って出場した古賀選手も見事金メダル。ふたりは、抱き合って男泣きし、見ている私も涙を誘われました。
古賀選手は、もしここで自分が負けたら、一生吉田選手がその罪を背負ってしまうと思ったのでしょう。それにしても、見事です。
平成の三四郎。安らかにお休みください。