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Channel: 銀幕と緑のピッチとインクの匂い
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『少年と自転車』

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少年と自転車 [DVD]/KADOKAWA / 角川書店
¥1,166
Amazon.co.jp


LE GAMIN AU VELO

2011年ベルギー・フランス・イタリア映画 カラー 87分

監督 ジャン=ピエール・ダルデンヌ リュック・ダルデンヌ

出演 セシル・ドゥ・フランス トマ・ドレ ジェレミー・レニエ



もうすぐ12歳になるシリル・カトゥルは、児童養護施設に入っている。父(ジェレミー・レニエ)は、シリルを育てられずに、実質捨てて施設に預けたのだが、シリルはそれを知らずに、父を探したいと熱望している。ある日、偶然出会った美容師のサマンサ(セシル・ドゥ・フランス)が、なくした大切な自転車を取り戻してくれる。シリルは、サマンサに、週末だけの里親になってくれ、と頼み、父親捜しを始めるのだが……。



繊細な筆致で名画を紡いでいくダルデンヌ兄弟が描く感動作です。



児童養護施設に入っているシリルは父親が自分を捨てたことを知らずに、父親を探すことだけを考えています。そのためには、外に出なければならない。そこで、偶然出会った美容師のサマンサに、週末だけ里親になってもらって、彼女の家に行き、父親探しを始めます。サマンサもそれを手伝いますが……。



偶然出会っただけのサマンサにいきなり週末だけとはいえ、里親になってくれ、と言い出すシリルにもびっくりですが、まあ、それは子供が考えること。もっと驚きなのは、それを受け入れるサマンサです。独身で、美容師であり、恋人もいるサマンサは、決して孤独な生活をしているというわけでもないと思います。里親として、シリルを受け入れたからには、それ相応の責任が伴います。おまけに、シリルは、サマンサのもとでおとなしく週末を過ごそうという考えなど毛頭もなく、そこを起点に父親を探そうとしているのです。かなり、厄介の種を背負い込んでいる気がするんですが、セシル・ドゥ・フランスがそんなサマンサを母性を持って演じています。



主役の少年は、オーディションで選ばれた新人です。素朴な演技で、なかなかいいです。でも、この子、父親がいない、ただ可哀想な少年なんかじゃありません。大人から見たら、かなりイラつく少年だし、悪い道にも行きそうになります。この作品も、決して可哀想な少年を取り巻く、優しい人たちの映画なんかじゃありません。



筆致は静謐です。キャラクターの背後があまり描かれていないだけに、想像力が入る余地も大きく、決して説明的な映画とは言えません。そんな中でも、少年を受け入れるサマンサが素晴らしい。ふたりで、自転車で走っていく描写も美しいです。



トレイラーです。









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