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Channel: 銀幕と緑のピッチとインクの匂い
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『子供たちは見ている』

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子供たちは見ている [DVD]/ジュネス企画
¥4,240kk
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I BAMBINI CI GUARDANO

1942年イタリア映画 白黒 86分

監督 ヴィットリオ・デ・シーカ

出演 イザ・ポーラ ルチアノ・デ・アンプロジオ エミリオ・チゴリ アンドリアーノ・リモルディ ディナ・ペルベリッニ イオーネ・フリガリオ ジョヴァンナ・ラッリ



ニーナ(イザ・ポーラ)はアンドレア(エミリオ・チゴリ)と、まだ幼い息子プリコ(ルチアーノ・アンブロシス)と暮らす主婦だった。メイドもいる中流家庭で、幸せに暮らしていた筈だった。しかし、彼女には、愛人ロベル(アンドリアーノ・リモルディ)がいて、隙を見ては密会し、ロベルから駆け落ちを迫られていた。遂に、ニーナは、駆け落ちをしてしまう。途方にくれたアンドレアは、プリコを田舎の母の元に預ける。しかし、祖母に馴染めないプリコは、家に戻り、高熱を出してしまう。プリコを心配して、ニーナは戻ってくる。プリコが母を慕うのを見て、アンドレアはニーナを許し、再び親子3人の暮らしが始まるのだが……。



名匠ヴィットリオ・デ・シーカの戦時中の作品です。デ・シーカは、戦後の『靴みがき』や『自転車泥棒』で、一気に名匠に登りつめた人ですが、戦時中にも、こういう映画を撮っていたのですね。



戦時中だというのに、ニーナの家にはメイドがいて、かなり恵まれた生活だということがわかります。ニーナの衣装も高級そう。夫は高収入なのでしょう。そして、穏やかそうな人です。実際の生活を見ても、穏やかでもめ事を嫌う人みたいです。可愛い盛りの息子プリコもいます。絵に描いたような幸せな生活なのですが、ニーナはそれだけでは満足できなかったのです。プリコとの散歩の間に、愛人のロベルと何度も密会します。ロベルは、ニーナに駆け落ちを迫ります。しかし、それはニーナに、息子さえも捨てろということ。ニーナは、なかなか決断出来ないでいたのです。ところが……。



物語は、まだ幼い男の子プリコの視点から描かれます。突然いなくなった母。父は、困り切って、田舎の祖母の家に預けます。でも、そこに居場所はない。プリコは、母に会いたいのです。父は、プリコを引き取って、恐らくはひとりで息子を育てる決意をしたのかもしれません。ところが、プリコが高熱を出したことを知って、突然ニーナが帰ってくるのです。あんなに会いたかった母が帰ってきたことで、プリコの母恋しさが募ります。ニーナも、プリコを置いて行くに行けない状態。駆け落ちした妻に怒り心頭だったであろう父は、決断します。



描かれるのは、大人の身勝手さです。勿論、一番身勝手なのは、母親。一度は見捨てた息子のところに平然と帰ってくるのです。父は、母親が出て行ったことに困り果て、祖母に息子を預ける始末。大人の都合で、プリコは、あちらこちらへとやられるのです。ただ、母がいないことで、父と息子の絆は深まります。恐らくは、妻に育児を任せっきりだったと思われる父親が、父親らしくなってくるのです。



それでも、やっぱり大人は身勝手。プリコは、身体は小さいながらも、そのつぶらな瞳で、大人たちの汚い部分を知ってしまうのです。胸が切なくなる物語。ヴィットリオ・デ・シーカは、子供を描かせたら、天下一品の人だと思います。



冒頭5分です。






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