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WALKABOUT
1971年イギリス映画 20世紀フォックス カラー 100分
監督 ニコラス・ローグ
出演 ジェニー・アガター リュシアン・ジョン デヴィッド・ガルピリル ジョン・メイロン
オーストラリア。都会に暮らす14歳の姉(ジェニー・アガター)と6歳の弟(リュシアン・ジョン)はある日、父親に連れられて砂漠へドライブに出た。だがその道中、一家心中を図った父親が自ら命を絶ち、どうにか逃げ延びた姉弟は広大な砂漠の中に取り残されてしまう。仕方なく旅を続ける2人だったが、やがて食料も水も尽きていった。そんな時、姉弟はアボリジニの風習に従って放浪の旅を続ける原住民の少年(デヴィッド・ガルピリル)に出会う。以来、姉弟は言葉の通じない少年に手助けされながら一緒に旅を続け、野性的な生活に刺激を受けていった。そして、姉と少年は次第に惹かれ合っていく……。
アボリジニの男は16歳で旅に出ます。この成人の儀式をウォークアバウトといいます。これは、独自の世界で生きてきたアボリジニの少年が、ウォークアバウトの途中に、文明人の少年少女と出会った物語です。
姉も弟も学校の帰りでしょうか。制服を着たまま、父親の車に乗り、何故か砂漠を走っています。ピクニックでもしようというのでしょう。車が止まり、姉弟は外に出ます。ところが、そこでいきなり父親が発砲してきます。姉弟に向かって、です。姉は弟を引っ張って、必死に逃げます。そして、父親は自分自身に発砲。車は炎上。姉弟は、砂漠にふたりきりで残されます。阿鼻叫喚になるであろうシーンが、何故かこの映画では静かに描かれます。いきなり父親が、自分たちを撃ってきたら、そりゃあもうびっくりなんてものじゃないし、恐怖でカチコチになるでしょう。ところが、この姉は冷静に弟を連れ出すのです。幼い弟も、泣き叫んだりしない。この時点で、このふたりは、ただ者じゃないです。
せめて、車が残っていれば、運転免許がなくてもぶつかるものもない砂漠ですから、運転してどこかに行くことも可能でしょう。また、中にいれば、日差しを遮ることも出来ます。しかし、お父さんは、車も一緒に持っていってしまいました。姉弟に残されたのは、自分たちの足だけです。砂漠のど真ん中で、どっちに行っていいのかわからない。でも、そこにいても、助けは望めないでしょう。どこかに踏み出すしかないのです。そうして、何かを求めて歩き回り、日焼けして皮がめくれた様が痛々しいです。それでも、姉の白いブラウスがまぶしい。洗濯をして白さを保つ彼女の姿には、凛とした思いを感じます。
やがて、彼女たちは、アボリジニの成人の儀式を粛々と営んでいる少年に出会います。勿論、言葉は通じません。この少年の人柄も全くわかりません。でも、姉弟は、彼に全てを委ねるしかないのです。少年の導きによって歩いていき、少年が獲ってくれる動物を食料にします。動物を食料とすることは、普段自分たちも普通に肉を食べているのに、まず動物を仕留めて、というところから始まると、引いてしまいます。これが、他の生命を頂くということ。厳粛な気持ちになります。
アボリジニの少年は、明るい性格で、幼い弟は懐き、結構楽しい旅になってきます。文明世界からやってきた姉弟と、文明を拒否するアボリジニの少年との、融和の時です。
名カメラマンでもあるニコラス・ローグの撮影は、実に綺麗です。特に、ジェニー・アガターが泳いでいるところなどは、周囲の自然とマッチして、非常に美しいシーンとなっています。文明批判、性の目覚め、色々な意味が込められている映画だと思います。でも、まずはとにかくカメラワークが美しい。命を賭けた彼らの冒険がどうなっていくのか、ハラハラドキドキさせられる映画です。私には、苦手な動物がいくつも出てくるのが難点ですが。
トレーラーです。