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THE SEARCH 2014年フランス・グルジア映画 カラー 135分
監督 ミシェル・アザナヴィシウス
出演 ベレニス・ベジョ アネット・ベニング マクシム・エメリヤノフ アブドゥル・カリム・マムツィエフ ズフラ・ドゥイシュヴィリ
1996年チェチェン戦争が終結。しかし、1999年プーチンが首相に就任すると、チェチェン独立派のテロが始まり、第二次チェチェン戦争が勃発した。チェチェン人の9歳の少年ハジ(アブドゥル・カリム・マムツィエフ)は、両親がソ連兵に殺されるシーンを物陰から見てしまい、、ショックで声が出せなくなる。姉も殺されたと思った彼は、赤ん坊の弟を抱き、ひとりで家を出るが、弟をある家の前に置いてきて、放浪する。やがて、彼は、フランスから調査にやってきたEU職人のキャロル(ベレニス・ベジョ)に保護され、保護施設に連れて行かれるのだが……。
アカデミー作品賞を受賞した『アーティスト』のミシェル・アザナヴィシウス監督が、チェチェン紛争を舞台に描いた力作です。正直なところ、よくぞここまで赤裸々に描いたものだと思います。誰でもが出来ることではない……。
EU職員のキャロルは、現地調査にやってきていますが、その悲惨さに胸を痛めています。EU人権委員会で、「この紛争に、世界が注目していると知らせることが必要です」と説きます。しかし、その訴えは一方通行。恐らくは自分の力のなさに落胆していたであろう彼女が出会ったのが、チェチェン人の少年ハジでした。言葉も通じず、ハジはショックからしゃべることも出来ない。意思の疎通が何も出来ない状態で、ふたりは出会い、共に過ごしますが、キャロルの気持ちは一方通行のまま。それでも、ウィ、ノンから始まって、少しずつ、ごく少しずつ交流が出来てくる様子が感動的です。やはり、人間は言葉を持つ生き物なのだと感じられます。辛抱強く、でも時にイライラしながら、聖人君子などではなく人間っぽいキャロルをベレニス・ベジョが好演しています。
並行して、ロシア人青年ニコライ(マクシム・エメリヤノフ)のことも語られていきます。最初は、友達とふざけながら町を歩くごく普通の青年だったニコライが、兵隊として強制徴収されて、苛め抜かれます。死体処理の仕事を与えられ、段々人間味を失っていくのです。最初は、死体処理マシーン、そしてやがては殺人マシーンへと育てられていく様が恐怖です。
このふたつのストーリーを平行して描いたことが、この映画の注目すべき点のひとつです。
加害者、被害者、どちらの視点からも描き、人間の持つ残酷さ、愚かさを引っ張り出しています。可哀想な少年の、可哀想な物語だけでは終わっていないところを、是非見て頂きたい作品です。
トレーラーです。