水谷優子さんを偲んで

　声優の水谷優子さんが、逝去されました。


　８０年代後半から声優として活躍。大人気アニメの『ちびまる子ちゃん』で、まる子のお姉ちゃん役で長らくお茶の間で親しまれました。


　他にも、沢山のアニメに出演されていたようです。


　私には、『ビバリーヒルズ高校＆青春白書』のアンドレア。アンドレアは、メンバーで一番好きで、その声が彼女だったことが嬉しかったです。それから、アンドレアほど有名ではなかったけれど、『バフィ　恋する十字架』のヒロイン、バフィ役。


　しっかり者のまるちゃんのお姉ちゃんから、やはりしっかり者で優等生のアンドレア、キュートなバフィと、色々演じ分けた声優さんでした。


　そして、彼女、ＯＶＡ版の『エースをねらえ！』で、ヒロインの岡ひろみの声を演じています。子供の頃から、岡ひろみは、彼女の憧れの対象でした。


　実は、水谷さんと私は、人生の多感な一時期、仲の良い友人でした……。彼女が引っ越してしまったので、短い時期ではあったのですが、急激に仲が深まり、一緒に行動していました。


　いつの頃だったか、水谷優子という声優さんがいるのを知って、まさか、と思いましたが、彼女が最後にくれた手紙が、「東京の俳優養成所に行く」というものだったので、多分本人なのだろうと確信を持つに至りました。声に聞き覚えがあるし、有名になるにつれてプロフィールもわかって写真も載っていました。ずっとずっと綺麗になっていたけれど、子供の頃の面影が残っていました。

　
　初めて子供だけで映画館に行った４人の仲間のひとりが彼女。

　
　遊びに行こうと約束して、地下鉄の７番ホームで会うことになっていたのに、しかし、２時間待っても、３時間待っても、彼女は来ない。連絡も取れない。それもそうです。私たちは、違う駅の７番ホームで、それぞれひとりで待ち続けたのでした。


　公園の池で手漕ぎボートに乗った日。近くのボートに乗っていたお兄さんたちが、ギターを弾いて『学生街の喫茶店』を歌っており、格好良いなあと見つめながら聞いていて、「♪時は流れた～」のところで、うっかりボートのオールを流しそうになったこと。


　林間学校に行って、私は係の仕事があって、凄く大きくて重いリュックを係の子たちは、後で部屋に取りに行かなければいけなかったのに、彼女が私の分まで下に持ってきてくれていました。あの、大きくて重いリュックをふたつ抱えて。優しい子でした。


　授業中に回ってきた手紙に、「後で話があるの。物凄く真剣よ」と書いてあって、休み時間に聞いた話が、彼女の転校でした。
　
　
　あと、一緒に過ごせるのは夏休みだけ。学校のプールで会い、どこかに遊びに行き、うちに遊びに来て貰った時は、母がお好み焼きを作ってくれました。その時にカセットテープにふたりで録音しました。


　引っ越してからは、手紙での付き合いが続きました。


　秋も深まった頃の日曜日、突然彼女は家にやってきました。用事があってこちらに来たので、うちを探してきてくれたのです。でも、次の日からテスト週間で、せっかく来てくれたのに、泥縄であらかじめ勉強していなかった私は、焦っていて、彼女との話もどこか上の空でした。ごめんなさい。せっかく来てくれたのに、本当にごめんなさい……。


　お別れに、私にも大切なものだったから、凄く迷ったけれど、『エースをねらえ！』のレコードをあげました。彼女は、お返しに『さらば宇宙戦艦ヤマト』のサントラカセットをくれました。『エースをねらえ！』のレコード、大事にしてくれたでしょうか。私のこと、覚えていてくれたでしょうか。私は、今も貴女がくれたヤマトのカセットを持っています。岡ひろみに憧れて憧れて憧れ続けた彼女は、後年、遂に岡ひろみを演じました。夢を叶えたね！！


　フェイスブックで貴女を探したけれど、本人はやっていなくて、連絡を取る手段はありませんでした。多分、ファンが多くて収拾がつかなくなるからだよね。でも、こんなことになるならば、ファンクラブもあったみたいだし、何かの方法で連絡を取っておけば良かった。そして、言いたかった。「夢を叶えたね」って。


　すっかりビッグになって、有名な声優さんになって、夢を叶えた彼女だけれど、もっともっとやりたいことがあったでしょう。あまりに早すぎる。若すぎる。若いから、癌の進行も早かったのでしょうか。


　明るく○○○ちゃん！と呼んでくれる彼女の声が、リフレインして離れません。


　会いたかった、もう一度。


　苦しかっただろうね、辛かっただろうね。もう、闘わなくていいんだよ。ゆっくり休んでね。